『ある殺人、落葉のころに』プロダクションノート_01

2017年5月、逗子海岸映画祭にて後に映画『ある殺人、落葉のころに』のプロデューサーとなる香港のフィルムメーカー、ウォン・フェイパンと。
この時、彼は休暇兼小説執筆のため日本にひと月ほど滞在し、週に2-3度会っては観光や食事を共にしていた。私はたまたま逗子海岸映画祭のボランティアスタッフをしていたので「少し遠いけど来る?」と誘ったところフットワークよく来てくれた。恐らく日本で一番賑やかな映画祭で小説を書いた最初の人物である。バーの端に座りラップトップを開いてキーボードを打ち込んでいた。
その後、その小説は完成したらしい。
彼と私が出会ったのはそれから2年遡り、韓国・釜山国際映画祭主催のアジア映画学校(若手映画人の育成を目的とした約3週間のワークショップ)でのことだ。同じチームということもあって仲が深まり、その後も、彼が監督として参加したオムニバス映画『十年』が大阪アジアン映画祭に招待されたタイミングなどで会うことができていた。
宿題を出し合う仲。彼と私の関係を一言で表せば、こうだ。最近見た映画は何か、という質問からそれぞれの映画に対する考え方を互いに問い、その問いを持ち帰り、考え続ける。正直言えば、私が彼と同じような質の問いができていたか心許ないが、とにかく彼と会うとやる気がでた。こう書くと生真面目な映画青年たちのようだけれど実際には会話の半分以上は冗談やふざけた内容である。
この時逗子海岸では何を話しただろうか。
「恋愛はどう?」
「最近、良い人に会えたかも」
「映画は?」
「この前会った時話したの覚えてる?」
「フィルムノワール?」
「そう。今年やりたいと思ってる。大磯ってところが舞台なんだけど」
「オオイソ。覚えてる。もうクルーは決まってるの?」
「これから」
その時、砂浜に座った二人の間に置いたピンチョスめがけてトンビが飛び込んできた。
(続く)
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【『ある殺人、落葉のころに』予告篇】